うずらのココ 第4話 ~夏は暑いよ~
ココの家にはクーラーどころか扇風機もありません。去年の夏に拾ったウチワが1本あるだけです。
そのウチワでパタパタあおいで、お父さんやお母さんに風を送るのがココの日課です。
昼間は、一生懸命に料理を作っているお母さんをあおいでいます。お母さんは、豆やジャガイモをゆでているだけですが、立派な料理だと思い込んでいます。
台所では、外から拾ってきた木の枝を「かまど」に入れ、火をつけてナベでお湯をわかしています。ただですら暑いのに、台所で火を燃やしているので室温が上がり、蒸気のせいで湿度が上がり、ものすごい暑さです。
更に、「かまど」からモクモクと煙が出て、煙が台所に充満して、もう、お母さんの姿も見えません。それどころか、煙のせいで目が痛くなり、目を開いていられません!
そのときココは何を思ったのか、その台所をウチワで思いっきりあおぎました。すると煙が少し薄くなって、ぼんやりとお母さんの顔が見えてきましたが、家中、煙だらけになりました。
お母さんは、目をパチパチしてキョロキョロしています。
ココは、(お父さんにそっくりだな。夫婦って似てくるんだな。でも、親子は似ない方がいいな。)と思いました。
次に、ココは、家の中に広がった熱気と煙を外に出そうとして、出入り口のトタンを開けました。すると、家の中の熱気と煙はだんだん外に出ていきました。
それを見たお母さんは、「ココちゃん、偉いわねぇ。よくできました。」とほめてくれました。
ココは得意そうに、「えへへ。」なんて照れています。
こうして、家の中の熱気と煙はなくなりましたが、そのかわり、家の中にはたくさん蚊が入っていました。
【以下の文章は、2016年11月9日更新しました】
夜には、お父さんが仕事から帰ってきます。お父さんは足首とヒザと腰と背中と肩と首が痛いと言っています。そのうえ、家の中はとても暑くて、お父さんはとても苦しそうです。
ココは、ウチワでお父さんをあおぎますが、いつもすぐに飽きて止めてしまいます。
お父さんは、「ココちゃん、もう少しだけお願い。」と言いますが、ココは言われたとおり、もう少しだけあおぎます。
そのうち、お父さんは「ココちゃん、100回くらいあおいでよ。」と言いました。
ココは、「100って何?」と質問しました。
お父さんは、「100というのは、数のことだよ。1、2と数えるとそのうち100になるよ。」と優しく教えてあげました。
ココは、「いち、にい、・・・ひゃ~く。いち、にい、・・・ひゃ~く。」と言いながら、合計6回あおぎました。
いつもは穏やかなお父さんですが、このときばかりは頭に血がのぼり、血圧と体温が上昇して、更に具合が悪くなりました。
また、頭から湯気が出たため、部屋の湿度が少し上昇しました。
しかし、すぐに気を取り直して、「ココちゃんのおかげで、なんとなくほんの少しだけ涼しくなったような気がしない訳でもないような、そうでもないような感じだよ。ありがとう。」と、意味のわからないことを言いました。
しかし、ココはギャグだと思ったのか「キャッ、キャッ、ケラケラ、ケラケラ。」と笑って大喜びです。
いつもは鈍感なお父さんですが、このときばかりはうれしくなって、今度はハートが熱くなりました。