よっしーworld

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第4話 ピッコロの金の斧(おの)

     2017.5.3更新

 ある日、カエルのお父さんは、自分の豪邸の庭園にある沼のまわりの木を切ることにして沼に出かけて行きました。そして沼に着くと、鉄の斧でカツンカツンと木を切り始めました。

 しばらくすると疲れてきて、手がすべって鉄の斧を沼の中に落としてしまいました。斧は、ドブンと沼の中に沈んでしまいました。

 それを見たカエルのお父さんは、言いました。

 「困ったな。斧がなければ木を切れない。困った。困った。」

 

 すると、沼の中からお釈迦様が出ていらっしゃいまして、銀の斧をお持ちになって、お聞きになりました。

 「カエルのお父さん。あなたは、今、沼に斧を落とされましたね。あなたが落としたのは、この斧ですか?」

 

 それを見たカエルのお父さんは答えました。

 「いいえ、私が落としたのは銀の斧ではありません。」

 

 それを聞いたお釈迦様は、また沼の中にお入りになりました。

 そして今度は、金の斧をお持ちになって出ていらっしゃいまして、同じことをお尋ねになりました。

 カエルのお父さんも、前と同じように答えました。

 「いいえ、私が落としたのは金の斧でもありません。」

 

 それを聞いたお釈迦様は、また沼の中にお入りになって、今度はダイヤモンドとエメラルドとルビーで装飾された斧をお持ちになって出ていらっしゃいますと、同じようにお尋ねになりました。

 「それでは、この斧でしょう?」

 

 この様子を近くの木陰に隠れて、じっーと見ていた者がありました。それはピッコロでした。

 ピッコロは、もう我慢できなくなって飛び出してきて、こう言いました。

 「お釈迦様、お釈迦様。お釈迦様がお持ちになられた3本の斧は、以前、私が落としてしまったものです。ですから、どうか私に返してください。

 私は、何年も何年も額に汗して働いて、苦労して貯めた貯金をはたいて、やっとそれらを買ったのです。

 いえ、うそではありません。なぜなら、私は、生まれてからこれまで一度もうそをついたことがないからです。」

 ピッコロは、お釈迦様に赤誠の限りを尽くして言いました。

 

 それを聞いていたお釈迦様は、お手に持たれた書類を入れた紙袋の中から、ピッコロの過去5年分の所得証明書の写をそっとお出しになりました。

 そして、優しくお尋ねになりました。

 「それでは、これは何でしょうか。所得はないようですが、どうやって貯金をしたのでしょう。」

 

 ピッコロは、びっくりしました。

 しかし、すぐに気を取り直して、こんこんと湧き出して流れる流水のように、でまかせばかりペラペラと答えました。

 「私は自営業者ですから、確定申告をしておりますが、間違えて収入ゼロと申告してしまいました。ですから、所得がないことになっています。」

 

 それを聞いたお釈迦様は、悲しいお顔をなさっておっしゃいました。

 「それでは、すぐに修正申告をしなければなりませんよ。正しい収入額を修正申告したら、そのときあなたの3本の斧をお返ししましょう。」

 

 この言葉を聞くと、ピッコロはお釈迦様から石を頭に落とされたように感じました。まるで、次から次へと石の雨が降ってきて頭の上を転がって流れていくようです。

 お釈迦様のおっしゃることは流石です。

 

 こうしているうちに、お釈迦様は、カエルのお父さんのことをお思い出しになりました。そして、正直に元の「鉄の斧」だけをお返しになりました。

 極楽は、デフレなのでございましょう。